|
スタッフが週替わりでお届けする「編集後記」。 今週はベトナム人スタッフのNguyen Thanhがお送りする、「ファンティエットの魚醤博物館『Lang Chai Xua』」のお話です。
旧ビントゥアン省ファンティエット市(現・南中部地方ラムドン省フートゥイ街区)は、昔からヌクマム(Nuoc mam=魚醤)の名産地として知られています。ここにある「ランチャイスア(Lang Chai Xua=昔の漁村)」は、ベトナム初のヌクマムをテーマとした博物館です。

約1600m2の館内は14のテーマ別スペースに分かれ、ファンティエットの漁村とヌクマムの約300年にわたる歴史を紹介しています。昔の街並みや塩田、漁師の暮らしなどが再現され、実際に昔の漁村を歩いているような感覚で楽しめるのが大きな魅力です。

館内では、チャンパ王国の時代から阮朝、フランス統治時代、1940~60年代へと、ファンティエットの歴史をたどることができます。

昔の写真や漁具のほか、ヌクマムの製造と商売で財を築いた「ハムホー(Ham ho)」と呼ばれる大規模なヌクマム生産者の家も再現されています。ハムホーは多くの大型の発酵桶を持ち、船でヌクマムを各地へ運んだ商人でもありました。一部は南部メコンデルタ地方アンザン省フーコック島などにも進出したとされ、ファンティエットのヌクマムを全国へ広げるうえで大きな役割を果たしました。


では、なぜファンティエットでヌクマム作りがこれほど発展したのでしょうか。大きな理由は、魚と塩という2つの原料に恵まれていたことです。この地域の海では海流や湧昇流の影響で魚の餌となるプランクトンが豊富になり、ヌクマムに適したカタクチイワシ類が多く獲れます。また、強い日差しと風に恵まれ、塩作りも古くから盛んでした。塩分濃度と純度の高い塩に加え、年間を通じて暑く乾燥した気候も発酵を助け、ファンティエット独特のヌクマムを生み出してきました。
ヌクマム作りのコーナーでは、魚と塩を「トゥンレウ(thung leu)」と呼ばれる大きな木桶に入れ、長期間発酵させる伝統製法を学べます。こうした大型木桶は、ヨーロッパの商人が使っていたワイン樽の製造技術を取り入れて発展したとされています。完成したヌクマムは「ティン(tin)」と呼ばれる陶器の壺に詰め、帆船で各地へ運ばれました。館内では、かつてこの地域でヌクマムを「マムヌク(Mam nuoc)」と呼んでいたという話も紹介されています。また、古代ローマの魚醤「ガルム」や、海上交易を通じた食文化の交流に関する説も紹介されていますが、地中海の魚醤が直接アジアへ伝わったという説は、学術的には定説となっていません。

この博物館は、展示を見るだけではありません。漁師になった気分で網を扱ったり、塩を運ぶ作業を体験したり、巨大な発酵桶を間近で見たりすることができます。純粋な一番搾りのヌクマム「マムリン(Mam rin)」について学べるのも見どころです。木材や昔の道具を使った館内には写真を撮りたくなる場所も多く、ヌクマムや歴史に詳しくない人でも気軽に楽しめます。

 (かつてのヌクマムブランド)
見学後は、博物館の隣にあるレストラン「ニャーハン・スア(Nha Hang Xua)」に立ち寄るのもおすすめです。昔の漁村を思わせる落ち着いた空間で、新鮮なシーフードやファンティエットの郷土料理、ベトナム料理を味わえます。



博物館でヌクマムの歴史や作り方を学んだ後、実際の料理と一緒にヌクマムを味わえば、その一滴に込められた海の恵みと人々の知恵をより身近に感じられるでしょう。ビーチや砂丘とはひと味違うファンティエットの文化に触れたい人におすすめのスポットです。
photo by Nguyen Thanh’s friend —————————— 今回は、ここまでです。 最後まで、お読みいただきましてありがとうございます。 今後とも、「ベ トナム株・経済情報」をよろしくお願いいたします。
|